「学校の実験を手伝ってほしい」。そう持ちかけられた少年たちは、渡された下剤や正体の分からない液体を飲み、激しい腹痛、嘔吐、下痢に苦しんだ。そして、その様子や排泄物を写真や動画にして送るよう求められた。
相手は同級生でも研究者でもなかった。少年が苦しみ、排泄する姿に性的興奮を覚える成人男性、ショーン・チュー・ジュンヤン(Sean Chew Jun Yang)だった。
彼は偽名を使って少年に近づき、「学校」「科学実験」「研究」といったもっともらしい理由で警戒心を解いた。そして逮捕され、服役した後にも同じような行為を再開する。被害者が送らされたのは単なるアンケート回答ではない。嘔吐物や便の写真、排便中の動画、さらには身体が映った映像まで含まれていた。
この男はなぜ、少年が腹痛や下痢に苦しむ姿に執着したのか。そして、刑務所に入ってもなぜ止まらなかったのか。
少年13人に大量の下剤――嘔吐、腹痛、下痢を撮影させる
最初に明るみに出た一連の事件は、2012年5月に始まった。当時20代前半だったチューはFacebookに複数の偽アカウントを作り、12~14歳の男子中学生に接触した。自分を彼らの小学校時代の友人だと思わせ、「学校のプロジェクトのための実験に協力してほしい」と持ちかけた。
実験は最初から存在しなかった。
チューが少年たちに飲ませたのは、便秘治療薬デュルコラックスだった。一度に10~20錠を服用させており、当時法廷で示された通常量の5~10倍にあたった。『ストレーツ・タイムズ』によると、4人は一日のうちに計20錠を飲まされ、一人は二日間で計30錠を服用している。被害者たちはその後、激しい腹痛、繰り返す下痢、嘔吐に見舞われた。
チューにとって、少年を体調不良にさせること自体が目的の終点ではなかった。彼が欲しがったのは、その結果を記録した画像や映像だった。
少年たちには、吐いた物や便を写真に撮るよう要求し、嘔吐や排便の様子を動画に撮らせることもあった。ある14歳の少年については、トイレを使用しているところを動画撮影するよう指示しており、後にチューの自宅から押収されたノートパソコンには、その少年が排便している映像、嘔吐している映像、便を撮影した画像が保存されていた。チューは捜査当局に、こうした写真や動画を性的な目的で利用していたことを認めている。
少年が本当に薬を飲んだか確認するため、Skypeのビデオ通話まで利用した。一人の被害者は数日の間に3回、それぞれ10錠ずつ服用させられ、最後にはビデオ通話で状態を監視された。ところがチュー自身はウェブカメラをマスキングテープで覆い、「故障している」と嘘をついて顔を見せなかった。薬そのものも自分で手渡さず、被害者宅近くの階段など公共の場所に置き、少年に取りに行かせていた。自分の身元が割れないよう、かなり慎重に行動していたのである。
事件開始から約1カ月後の2012年6月、チューは逮捕された。自宅からは300錠を超えるデュルコラックスが押収された。しかし、逮捕は彼を止めなかった。
保釈されたチューは再び14歳の少年を狙い、同じような行為を繰り返した。さらに再度保釈された後、2015年6月にも犯行に及び、その被害者は病院への入院を必要とする状態になった。
被害者は13人に達した。検察官は、チューが少年たちを「組織的かつ繰り返し、自らの性的満足のために狙った」と指摘した。
2015年11月、26歳だったチューは8件の傷害罪を認め、ほか10件も量刑で考慮されたうえで懲役3年を言い渡された。弁護側は保護観察を求めたが、裁判官は犯行の重大性、計画性、被害者の年齢、さらに逮捕後の再犯を重く見た。
出所後も再開――今度は身体そのものを撮影させた
懲役刑を受けた後も、チューの行動は終わらなかった。
2026年の裁判で明らかになったところでは、チューは2018年から2023年までに少なくとも30人の被害者または標的に接触していた。このうち少なくとも19人が、氏名、年齢、性別、人種、身長、体重、学校名、課外活動など何らかの個人情報を渡し、10人以上が求めに応じて自分の写真を送っていた。
手口の中心にあったのは、以前と同様になりすましだった。WhatsAppなどで中学生に連絡し、小学校時代の友人を装う。「自分が誰か当ててみて」と尋ね、少年が実在する友人の名前を挙げると、その人物になりきるという方法さえ使った。
ある男子中学生には、「人によって異なるタンパク質に対して体がどう反応するかを研究する学校のプロジェクト」だと説明した。チューは最初から「参加すると下痢や嘔吐をする可能性がある」と告げていたが、少年は小学校時代の友人を助けていると思い込み、協力した。
2019年1月から7~8月ごろまで、チューはこの少年に6回にわたって物質を送りつけた。中には食用油や重曹も含まれていた。少年はビデオ通話をつないだままそれらを摂取し、腹部のどこが痛むのかをチューに伝えた。
実際に下痢が起きると、少年は指示されたとおり写真を送った。さらにチューから質問を受けたり、下痢をしている状況を演じるよう求められたりした。チューはその通話を多数録画していた。
しかも、録画中に少年の私的な身体部分が映ってしまうこともあった。少年はそれを不安に感じたが、チューは「研究機関に提出する前に映像を加工して隠す」と説明した。もちろん、そもそもの研究自体が虚偽だった。
少年が途中で「もうやめたい」と申し出ると、チューはいったん同意しながら、「最後にもう一回だけ」と参加を求め、さらに自分がどう感じたかを作文に書かせた。
この少年が騙されていたことに気づいたのは2021年1月だった。偶然、本物の小学校時代の友人と食事をし、これまで連絡を取っていた人物がその友人ではなかったことを知った。チューを問い詰めると、本人はなりすましを認めたうえで、警察には知らせないでほしいと頼んだという。
別の少年には「人間の消化について調べるプロジェクト」と称してプルーンジュースを一本飲ませ、便の写真を要求した。二時間以上ビデオ通話を続け、その間チューは何度もトイレへ行くよう促したが、この少年には排便が起こらず、結局通話を終了している。
また、学校でタピオカ飲料を飲んだ後に吐いた経験がある少年を探し出して接触した例もあった。この少年はプルーンジュースを買うよう要求されたものの、「変だ」と感じて断った。
2023年には、「食品衛生と安全に関する科学統計プロジェクト」を装った。ある少年はプルーンジュースを飲み、自分が排便している動画を撮影してチューに送ったうえ、友人まで「実験」に誘ってしまった。
誘われた別の少年はチュー本人と会い、粉末、液体、錠剤が入った容器を受け取った。5月25日ごろ、それらの一部を摂取すると、嘔吐と下痢を起こした。医学を学んでいたいとこに相談したことから母親にも事情が伝わり、後に液体と錠剤には便秘治療用の下剤が含まれていたことが判明した。
2023年9月の逮捕時には、チューの所持品から一人の男子生徒について19本の録画が発見され、その中には排便している様子を記録したものもあった。
なぜ「男子」だけだったのか――若い少年への性的関心
チューの事件で無視できないのが、標的が一貫して男子だったことである。
2015年の事件でも被害者13人は12~14歳の少年だった。2026年の裁判でも、彼のフェティシズムは13~15歳前後の男子が腹痛や下痢を起こしている姿や声に向けられていたと、シンガポール精神衛生研究所(IMH)の評価が紹介されている。しかもチューは単に「下痢」という現象だけを求めていたわけではない。標的を探す際には、特に中学1~2年程度の小柄な男子を探すため、年齢や身長、体重、写真まで要求していた。
さらに2019~2020年の別件では、男子中学生とオンラインゲームを通じて親しくなった後、チュー自身が「若い男子に興味がある」と話していた。
二人は上半身裸の少年の写真を交換し、写っている少年について「かわいい」かどうかを話していた。その後、会話は性的な内容へ進み、チューは虚偽の説明を使ってこの少年から性的な動画を入手した。2020年4月に警察が携帯電話を押収した際には、制服姿の少年2人が登場する児童性的虐待資料に該当する映像も発見された。
チューの性的関心には、腹痛、下痢、嘔吐や排泄だけでなく、若い男子そのものへの選択的な関心も含まれていた。性的満足を得る対象として一貫して若い男子を選び、その男子たちの写真を集め、身体的特徴を選別し、一部には性的な映像まで要求していた。
17~18歳ごろから始まったフェティシズム――チュー本人について分かっていること
チューは1989~1990年ごろに生まれたシンガポール人で、2015年の最初の判決時には26歳だった。当時、化学工学のディプロマ課程の最終学年に在籍しており、弁護人によれば成績は平均でA評価だった。精神面ではフェティシズム障害に加え、「社会的回避傾向のある人格特性」があるとも評価されていた。
学業成績が良かったことは、事件の中でも興味深い点である。少年たちに対して「科学実験」「タンパク質への身体反応」「消化」「食品衛生研究」などのもっともらしい設定を繰り返し利用しており、本人が化学工学を学んでいたという背景とは少なくとも表面的には重なる。
より直接的な情報が出ているのは、性的嗜好の始まった時期である。2025年7月にIMHがまとめた精神医学的評価によれば、チューは17~18歳ごろからこのフェティシズムを持つようになった。その対象は13~15歳程度の男子が腹痛や下痢に苦しむ姿や音声だった。
2015年の裁判では、チューのフェティシズム障害はそれ以前には診断・治療されておらず、弁護側は本人が自分の状態を十分に理解せず、治療の重要性を認識できていなかったことを再犯の一因として主張した。チュー自身は警察に対して、嘔吐物や便に対するフェティシズムがあると認めている。
彼の説明によれば、もともとはインターネット上に存在する映像を見ていた。しかし、それでは飽き足らなくなった。「違うもの」が欲しくなり、少年たち自身から「生の」写真や動画を入手しようと考えたという。これが、オンライン上で既存の映像を見る段階から、実際の少年を騙して体調不良にさせる段階へ移った動機として、2015年の法廷で示されている。
この経緯は重要である。チューは偶発的に少年の体調不良を目撃して興奮したのではなく、自分が求める映像を作るため、少年を探し、下剤を準備し、偽名を作り、薬を隠して置き、撮影方法を指示していた。
しかも、その後はさらに対象が広がっている。単に実際の下痢を撮影するだけでなく、過去の食中毒について語らせる音声、腹痛や下痢を演じる動画、少年自身の写真、上半身裸の男子の写真、性的な動画まで集めるようになった。フェティシズムと若い男子への性的関心が重なった状態で、複数種類のコンテンツを求めていたことが分かる。
「精神障害だったから」では説明できなかった再犯
2025年のIMH評価では、チューにフェティシズム障害が存在すること自体は認められた。しかし同時に、その障害と今回の犯罪との間には、刑事責任を軽減するような因果的関係はないと評価された。
チューは自分の行為が法的にも道徳的にも間違っていることを理解していた。
実際、犯行の方法を見ると、違法性を意識していたことを示す行動が繰り返されている。自分の顔を映さない。偽名を使う。実在する友人になりすます。「研究」という架空の目的を作る。録画に少年の身体が映ると「あとで隠す」と説明する。なりすましが発覚すると「警察に言わないでほしい」と頼む。
さらに決定的なのは、警察や裁判所との接触そのものが再犯を止めなかったことである。
2012年に逮捕された後、保釈中に再犯した。再び逮捕されても、もう一度保釈中に犯行へ及んだ。2015年には懲役3年を受けた。それでも2018年以降、新たな少年を探し始めた。
2020年4月には警察が携帯電話を押収し、児童性的虐待資料まで発見している。それでも警察の保釈中に再犯を続けた。そして2023年4月ごろには、IMHから処方されていた薬が効いていないことを本人自身が認識していたにもかかわらず、その後も少年に下剤を摂取させる行為を続けた。
2026年6月18日、36歳のチューは、他人になりすました詐欺、性的満足を目的とした性的コミュニケーション、有害な薬物による傷害、虚偽説明によって私的な録画を作らせた罪など11件について有罪を認めた。さらに17件が量刑で考慮され、懲役6年1カ月を言い渡された。検察側は6年4カ月から7年1カ月を求刑していた。
チューの事件を「珍しい下痢フェチを持った男の奇妙な犯罪」とだけ捉えると、その悪質さを見誤る。
少年の中には、一度に20錠もの下剤を飲まされ、激しい腹痛、嘔吐、下痢を起こした者がいた。二日間で30錠を飲んだ者もいた。便や吐瀉物を撮影させられ、排便や嘔吐そのものを録画させられた少年もいた。後の事件では、身体が映った映像まで録画され、「研究に使う」という虚偽の説明で保存された。
そして、その一つ一つは偶発的な行動ではなかった。
チューは自分が見たい映像を手に入れるために、少年の年齢や体格を調べ、実在する友人の名前を盗み、学校の研究という設定を作り、薬品を準備し、撮影させ、記録を保存していた。
「学校の友人から実験を頼まれた」という少年たちの善意と信頼が、性的な目的のために利用されたのである。
出典
Lydia Lam — Repeat offender with diarrhoea fetish jailed for targeting boys in secondary school
CNA, 2026
https://www.channelnewsasia.com/singapore/man-diarrhoea-fetish-jailed-schoolboy-6193161Siau Ming En — Man with fetish disorder gets 36 months’ jail
TODAY / CNA, 2015
https://www.channelnewsasia.com/singapore/man-fetish-disorder-gets-36-months-jail-5808536Ng Huiwen — Man who conned boys into taking laxatives gets jail
The Straits Times, 2015
https://www.straitstimes.com/singapore/courts-crime/man-who-conned-boys-into-taking-laxatives-gets-jail




