膣レーザー、卵巣若返り、ホルモン療法、天然媚薬!女性を陥れるアンチエイジングの罠

膣レーザー、卵巣若返り、ホルモン療法、天然媚薬!女性を陥れるアンチエイジングの罠 科学
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年齢を重ねると、女性の体にはさまざまな変化が起こる。閉経が近づけば女性ホルモンの分泌が減り、膣の乾燥や性交痛、性欲の低下などが現れることがある。こうした悩みに対して、「膣を若返らせる」「卵巣を再生させる」「ホルモンを若い頃の状態に戻す」といった治療が広がってきた。

なかには医学的な治療として効果が認められているものもあるが、その一方で、「若返り」を強調しながら十分な検証を経ずに広まり、強い痛みや感染、瘢痕、ホルモンの副作用などを引き起こした治療もある。特に注意が必要なのは、「自然だから安全」「自分の血液を使うから安心」「手術ではないから危険は少ない」といった説明で広がった治療である。

「膣を若返らせる」レーザーで、性交が以前より苦痛になった

近年、女性向けのアンチエイジングとして広く知られるようになったものの一つが「膣若返りレーザー」である。炭酸ガスレーザーなどを膣の内側に当て、熱による刺激でコラーゲンの生成をうながし、膣の組織を若返らせるという治療で、閉経後の乾燥、性交時の痛み、尿もれ、膣のゆるみ、性的な満足感の低下などに効果があるとして宣伝されてきた。

しかし、偽の治療と比べた試験では、期待されたほど明確な効果は出ていない。中等度から重度の閉経後症状がある女性60人を対象に、実際のレーザー治療と、治療を受けたように見せる偽治療を比べた研究では、どちらのグループでも症状はある程度改善したものの、12週間後には両者に明確な差はみられなかった。

一方、治療後にそれまでより性交が苦痛になった女性も報告されている。性医学を専門とする医療機関がまとめた症例では、65歳の女性がレーザー治療後に性交を再開したところ、膣の壁が2か所裂けた。61歳の女性では性交時の痛みが続き、68歳の女性では痛みが悪化したうえ、膣の途中に硬い線維状の組織ができて内部が狭くなっていた。別の55歳女性も、治療後に性交痛と挿入時の痛みを訴えている。

FDAの有害事象データベースにも、症状が悪化した例が残されている。ある女性は、閉経後の性交痛を軽くするため「モナリザ・タッチ」と呼ばれるレーザー治療を受け、「痛みがなく、安全で、早ければ1回目から効果がある」と説明されたという。ところが2回の治療後、性交時の痛みはかえって強くなり、それまでは膣の入口付近に限られていた痛みが内部全体へ広がった。焼けるような痛みのため、性交を途中でやめなければならないほどだった。

別の報告では、治療後に瘢痕ができ、膣や直腸の周辺に痛みが残った女性もいる。筋肉のけいれん、頻尿、強い尿意などが起きた例もあり、直腸瘤まで改善すると説明された女性が、治療後に症状を悪化させて手術が必要と診断された例も報告された。

こうした症例は発生率そのものを示すものではないが、「若返り」を目的に受けた治療によって、逆に瘢痕、性交痛、粘膜損傷が起きた実例があることは確かである。

自分の血液で卵巣を若返らせる――PRP治療の思わぬ危険

女性向けアンチエイジングで、ここ数年広がってきたのが「卵巣若返り」と呼ばれるPRP治療である。PRPとは、本人の血液を採取し、血小板を多く含む部分だけを取り出した液体である。血小板には傷の修復に関わる物質が含まれるため、それを卵巣に注射すれば、衰えた卵巣を「再生」できるのではないかと考えられた。

この治療では、「AMHが上がる」「卵巣の働きが戻る」「月経が再開する」「卵子が増える」「妊娠しやすくなる」といった効果が期待されてきた。自分の血液を使うため、「薬より自然」「拒絶反応がない」「安全な再生医療」といったイメージも持たれやすい。

しかし、PRPを卵巣に届けるには、針を体の奥まで入れて卵巣に注射する必要があるため、出血や感染、周囲の組織を傷つける危険がある。2026年には、「卵巣若返り」のため両方の卵巣にPRP注射を受けた45歳女性が、両側の卵巣周辺に膿瘍をつくった症例が報告された。

この女性は処置の数日後から下腹部の痛みが続き、病院で調べると白血球が増えており、両側の卵巣付近に複雑な腫れが見つかった。抗菌薬を点滴しても改善せず、最終的には針を入れて膿を抜く処置が必要になった。膿からは細菌が検出され、両側の卵管と卵巣に膿瘍ができていることが分かった。日常生活や月経の状態を取り戻すまでには、約4か月かかった。

卵巣PRPでは、AMHなど一部の数値が改善したとする研究はあるものの、妊娠や出産にどこまでつながるかはまだ明確ではない。その段階で卵巣に針を刺す処置を受ける以上、「自分の血液だから安全」という説明だけでは危険性を判断できない。

「若返りホルモン」で起きた、がん・異常出血・声の変化

女性向けアンチエイジングでは、ホルモンを使った「若返り」も大きな市場になっている。閉経後のほてりや膣の乾燥だけでなく、疲労、性欲低下、体重増加、気分の落ち込みまでまとめて「ホルモンの老化」と説明し、若い頃に近い状態へ戻すことを売りにする治療が行われてきた。

その代表例が、「バイオアイデンティカル・ホルモン」と呼ばれる治療である。バイオアイデンティカルとは、人の体内にあるホルモンと同じ化学構造を持つという意味で、この言葉自体が危険を示すものではない。問題になっているのは、「天然だから通常のホルモン薬より安全」「一人ひとりに合わせて調合するから副作用が少ない」と宣伝される、独自に調合された製剤である。

米国産婦人科学会は、こうした調剤ホルモンが、通常の承認された製剤より安全または効果が高いという根拠はないとしている。2007年には、このようなバイオアイデンティカル・ホルモン補充療法を受けていた女性3人に子宮体がんが見つかった症例が報告された。3症例だけで治療とがんの因果関係を決めることはできないが、ホルモン量の調整を誤れば、エストロゲンの作用が強くなりすぎて子宮内膜が増殖し、子宮体がんの危険を高める可能性がある。

テストステロンを女性の「若返り」に使う治療でも問題が起きている。テストステロンは女性の体にも少量存在し、性欲に関係しているため、「性欲が戻る」「元気になる」「筋肉がつく」といった目的で使われることがある。特に、テストステロンを固めた小さなペレットを皮下に埋め込み、数か月かけて放出させる方法では、副作用が出てもすぐに中止しにくい。

報告されている副作用には、顔や体の毛が増える、にきび、気分の変化、体重増加、子宮からの異常出血などがある。異常出血がひどくなり、最終的に子宮摘出手術を受けた女性も報告されている。また、テストステロンの作用が強すぎると声が低くなることがあり、こうした声の変化は元に戻らない場合がある。

さらに、アンチエイジング医療では成長ホルモンも「若返りホルモン」として使われてきた。成長ホルモンは年齢とともに減るため、それを若い頃の量に近づければ、脂肪が減り、筋肉が増え、活力や性欲も戻るという考え方である。

健康な高齢者を対象にした研究をまとめると、脂肪は平均で約2キログラム減り、脂肪以外の体重は約2キログラム増えた。しかし、体重そのものや生活の質には大きな改善がみられず、むくみ、関節痛、手根管症候群、血糖値の上昇などの副作用が増えていた。若返りを目的に健康な人へ使うほどの利益は認められなかった。

これらの治療に共通するのは、「若い頃のホルモン状態に戻せば、体も若返る」という単純な説明である。しかし、ホルモンは多ければ多いほど良いものではなく、少し量がずれるだけでも全身に影響する。「天然」「自分専用」「若い頃と同じ」といった表現は、安全性を保証するものではない。

「天然媚薬」の中から、本物の医薬品が見つかった

「天然成分で性欲を高める」「女性の感度を上げる」とうたう、いわゆる「天然媚薬」や女性向け性機能サプリにも危険な商品がある。ハーブや蜂蜜などを使った自然派の商品に見せながら、実際にはラベルに書かれていない医薬品を混ぜた製品が繰り返し見つかってきた。

この問題は一部の商品だけに限らない。FDAが2007年から2016年までに警告したサプリメントを調べた研究では、表示されていない医薬品成分が見つかった776製品のうち、353製品が性機能向上をうたう商品だった。そのうち287製品からは、シルデナフィルや、それによく似た成分が検出されている。シルデナフィルはバイアグラに使われる処方薬であり、本来は医師の管理のもとで使用される。

女性向けの商品からも、同じような成分が見つかっている。2022年には「Secret Miracle Honey for Women」という女性向けの商品からシルデナフィルが検出され、2023年にも「Honey Girl」「Diamond Girl Lite」という製品から同じ成分が見つかった。いずれも購入者には医薬品が入っていることが分からない状態で販売されていた。

2026年には、「WAP Sensual Enhancement」という女性向け性機能増強商品がFDAの警告対象になった。4月に検査された製品からは、シルデナフィル、タダラフィル、フリバンセリンの3種類が表示なしで検出された。フリバンセリンは一部の女性の性欲低下に使われる処方薬であり、この商品はその後、自主回収された。

さらに別のWAP製品を調べると、今度はヨヒンビン、タダラフィル、フリバンセリンという別の組み合わせが見つかった。特にヨヒンビンはFDAが危険なほど高濃度とした量で含まれており、重い高血圧、不整脈、心筋梗塞、けいれん、不安や混乱などを引き起こす可能性があると警告された。同じ名前の商品でも中身が一定ではなかったことになる。

こうした製品で特に危険なのは、利用者が医薬品を摂取していること自体を知らない点である。シルデナフィルやタダラフィルは他の薬との組み合わせによって血圧が大きく下がることがあり、フリバンセリンも眠気、低血圧、失神などを起こすことがある。本人が「天然サプリを飲んだ」としか認識していなければ、体調を崩して医療機関を受診しても、原因となる薬を医師に伝えることができない。

しかも、こうした製品が何らかの作用を示した場合、「天然の媚薬が本当に効いた」という評判が生まれる可能性もある。実際には、その効果がハーブではなく、隠されていた処方薬によるものかもしれない。FDAは現在も性機能向上をうたう製品への警告を続けており、「天然」という言葉だけでは中身の安全性を判断できない状態が続いている。

「若返り」という言葉が、治療の危険を見えにくくする

女性の老化にともなう体の変化そのものは現実に存在する。閉経後には膣の乾燥や性交痛が起こりやすくなり、性欲が低下する人もいる。問題は、こうした本物の悩みに「若返り」という言葉を重ねることで、治療として必要なものと、効果や安全性が十分に確かめられていないものとの境目が分かりにくくなることである。

膣レーザーでは、痛みを減らすはずの治療で瘢痕や性交痛が残った女性がいる。卵巣PRPでは、妊娠を期待して受けた処置の後に両側の卵巣周辺へ膿瘍ができた。ホルモン療法では、「自然」「若返り」をうたいながら、がん、異常出血、声の変化などが問題になった。天然を名乗る性機能サプリでは、そもそも表示されていない医薬品が見つかっている。

共通しているのは、「膣を若くする」「卵巣を再生する」「ホルモンを若い頃に戻す」といった分かりやすく魅力的な説明である。だが、治療を評価するときに重要なのは、その言葉の印象ではない。具体的な症状がどの程度改善するのか、どのような副作用が起きているのか、そしてその利益が危険を上回るのかである。

出典

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