坂口安吾は1942年の『日本文化私観』で、中国・広東の「盲妹(もうまい)」について書いている。容姿のよい少女を幼いうちに買い取り、歌や踊りを仕込み、やがて目を見えなくして男性客の相手をさせるという話である。かなり異様な記述だが、世界各地の歴史や民族誌を見ていくと、結婚相手として好まれるため、女性として美しく見られるため、あるいは夫を性的に満足させるために、少女や女性の身体を恒久的に作り変える習慣は実際に数多く存在してきた。
その方法は地域によってまったく違う。女性器を切除して狭くする社会もあれば、小陰唇を何年もかけて長く伸ばす社会もある。皮膚に大きな傷跡を作り、下唇を皿が入るほど広げ、歯を尖らせたり、結婚前に歯をまとめて抜いて義歯にしたりする例もあった。こうした身体改造は単なる装飾ではなく、少女が成人女性になり、結婚し、性生活を始める過程と深く結びついていた。
美少女の目を潰して客に差し出す――広東の「盲妹」
広東では清末から民国期にかけ、盲目の女性歌手が「瞽姫(こき)」、俗に「盲妹」と呼ばれていた。彼女たちは琵琶や月琴などの楽器と歌を覚え、夜になると茶楼や宴席へ出て客の前で演奏した。幼い盲目の少女を貧しい親から買い取り、年長の盲女や養母が芸を仕込む仕組みもあり、広州には盲妹を抱えて教育する場所がいくつもあった。1912年の『時事画報』は、貧しい盲目の少女が「瞽家」に売られて歌を習い、夜ごと街へ出された様子を伝えている。
ところが中国側の史料を詳しく見ると、生まれつき、あるいは病気などで失明した少女だけが盲妹になったわけではなかった。胡朴安の『中華全国風俗志』に収められた「広東之瞽姫」には、業者が容姿の美しい少女を選んで買い、歌や踊り、客の応対を教え、十四、五歳になると両眼を潰したと記されている。その後は義眼を入れたり黒い眼鏡をかけさせたりして客のもとへ出したという。目が見えなければ客の年齢や容姿を選ぶことができず、逃げることも難しくなるため、養母や楼主にとって支配しやすい存在になった。
広州だけではなく、広西の梧州にも似た記憶が残されている。1981年の『広西文史資料選集』に収録された欧三妹、羅二妹、黄彩群らの口述「旧社会梧州“盲妹”的苦難」では、清末から民国期にかけて官僚や富商らの間で盲妹を囲う習慣があり、養母が目の見える少女を買って失明させた例が語られている。この資料は出来事から年月を経てまとめられた回想だが、胡朴安とは別系統の中国語資料にも、目の見える少女を人工的に失明させたという記憶が残されている。
盲妹の仕事は歌だけではなかった。『時事画報』の「盲世界」では、客が少なく稼ぎが足りなければ師匠から食事を与えられなかったり、暴力を受けたりするため、売春を兼ねる女性がいたことが記されている。夜の興行で十分な金を得られないと帰宅できず、客を取ることによって不足分を補う女性もいたのである。盲目の女性芸能者という職業と、男性客を相手にする性産業が重なる世界が広州には存在していた。
したがって、坂口安吾が書いた「少女をわざと盲目にして男の相手をさせる」という話は、中国側の記録にもかなり近い内容が見つかる。ただし当時の盲妹には、もともと盲目だった女性と、後から失明させられた女性の双方がいたと考えるのが、中国語史料と近年の歴史研究を最も自然に説明できる。
少女のころから小陰唇を伸ばす――ルワンダやモザンビーク
ルワンダでは、少女が小陰唇を指で引っ張り、時間をかけて長くする「グクナ」という習慣が知られている。始める時期には地域差があるが、初潮より前から行う少女もいる。植物から作った滑りやすい液体などを使い、左右の小陰唇を指でつまんで引き伸ばす作業を繰り返す。短期間で形を変えるのではなく、少女期を通して少しずつ伸ばし、結婚後も続ける女性がいる。
方法を教えるのは、多くの場合、姉、叔母、年長の友人など身近な女性である。そこでは月経や結婚生活、性交についての知識と一緒に、小陰唇をどのように伸ばすかが伝えられる。長くなった小陰唇は成人女性らしい身体の一部とみなされ、性交時には男性が指などで刺激することによって、男性だけでなく女性自身の快感も高まると説明されてきた。ルワンダで行われた民族誌調査でも、この習慣の大きな目的として男女双方の性的快感が挙げられている。
モザンビークでも同じ系統の習慣が広く行われてきた。ザンベジア州の調査では、この習慣を知っていた女性の大多数が、すでに実践しているか、将来行うつもりだと答えている。理由としては、自分自身の性的快感、男性の性的快感、男性が長い小陰唇を持つ女性を好むことなどが挙げられた。つまり、結婚後に夫を満足させて関係を保つという意味と、自分自身の性生活を豊かにするという意味が重なっていた。
こうして少女は、結婚して初めて身体を変えるのではなく、将来の性生活を想定しながら何年も前から準備していた。小陰唇の長さは、単なる見た目ではなく、成熟した女性の身体、性的に望ましい身体として扱われていたのである。
切って閉じ、結婚すると開く――スーダンの陰部封鎖
スーダンでは、少女の女性器を切除したうえで膣の入口を非常に狭くする「陰部封鎖」が広く行われてきた。現在、世界保健機関はこれを3型女性器切除に分類している。小陰唇または大陰唇を切り、その左右を寄せて治癒させ、尿や月経血を排出するための小さな開口部だけを残す。完全に塞ぐのではないが、性交や出産には大きな支障が出るほど入口が狭くなる。
少女期に閉じられた身体は、結婚すると再び開かれる。伝統的には、新婚の夫が性交を繰り返し試み、瘢痕(はんこん)を少しずつ広げることもあったが、助産師などが刃物で切り開く方法も行われてきた。現在の医療では、この処置は陰部開放術と呼ばれ、性交を可能にしたり出産に備えたりするために行われる。世界保健機関も、3型女性器切除を受けた女性では開放術が必要になる場合があるとしている。
さらに特徴的なのが出産後である。出産時には赤ん坊を通すため入口を大きく開く必要があるが、一部地域では産後に再び縫い合わせて狭く戻す「再封鎖」が行われてきた。女性は少女期に閉じられ、結婚時に開かれ、出産時にさらに開かれ、その後また閉じられるという処置を繰り返すことになる。世界保健機関は現在、再封鎖によって健康上の危険が増すとして行わないよう勧告している。
人類学者エレン・グルーエンバウムが2004年にスーダンの農村7地域で調査したところ、陰部封鎖は男性が十分な性的反応を得られる身体という考え方と深く結びついていた。狭く整えられた女性器を美しいと考え、夫を満足させる妻の身体として評価する価値観があり、出産後に再び狭くすることも、新婚時の身体を取り戻す意味を持っていた。
実際の性生活では、狭くなった入口や硬い瘢痕のため、挿入が難しくなったり、性交時に強い痛みが出たりする女性もいる。尿や月経血の排出が難しくなるほか、性交時の痛みや性的満足の低下も医学的に報告されている。社会の側では「夫を喜ばせる狭い身体」と評価されても、その身体で暮らす女性自身は、結婚、性交、妊娠、出産のたびに影響を受けることになる。
傷跡と巨大な唇が「大人の女」をつくる
ナイジェリア北東部のガアンダでは、少女の皮膚へ段階的に傷をつけ、盛り上がった瘢痕で模様を作る「フリータ」という習慣があった。額、腹部、腕、臀部(でんぶ)、太腿など、身体の複数の場所へ成長に合わせて傷を増やしていくため、完成までには何年もかかった。少女が一定の段階まで身体装飾を終えることは、成人女性として認められ、結婚できる年齢に達したことを示す意味を持っていた。
傷は衣服で完全に隠されるものではなく、成人した女性の身体に残り続ける。つまり装飾品を身につけるのとは違い、一度形成された模様は、結婚後も出産後もその女性が何者であるかを示し続けた。20世紀後半になると、行政による禁止やキリスト教、学校教育などの影響によって急速に衰退していった。
エチオピア南西部のムルシ女性がつけるリッププレートは、さらに外見を大きく変える。少女が15、16歳ほどになると、母親や集落の女性が下唇を切り、まず木の栓を入れて傷が治るのを待つ。その後、少しずつ大きな栓に替えながら数か月かけて唇を伸ばし、本人が望めば直径12センチ以上の皿が入るほど広げる。どこまで大きくするかは少女自身の判断による部分も大きく、唇に穴を開けないまま結婚する女性もいる。
プレートは常に入れ続けるわけではなく、結婚前の少女は踊りなどの場でつけ、既婚女性は牛の乳を搾るときや夫へ食事を運ぶときなどに身につけてきた。プレートをつけると顎の動きや歩き方も変わり、ゆっくりと落ち着いて振る舞う姿が成熟した女性らしさの表現とされた。ムルシ社会では、リッププレートは結婚可能な少女や出産年齢の女性を示す身体装飾でもあった。
「皿が大きいほど多額の婚資をもらえる」という説明はよく紹介されるが、ムルシを長年研究してきた研究者によれば、婚資は唇を加工する前に決まっている場合も多く、単純な比例関係ではない。また「奴隷商人から女性を守るため、わざと醜くした」という説も現地研究では支持されていない。結婚、出産、女性としての立ち居振る舞いと結びついた身体文化として見る方が実態に近い。
歯を尖らせる女、結婚前に歯を全部抜く女
インドネシアのメンタワイ諸島では、女性の前歯を鋭く尖らせる習慣が知られている。前歯の両側を削り、普通の平たい形から三角形に近い形へ変えていく。処置後の歯は元には戻らず、削る量によっては歯の内部に近い部分まで露出することもある。それでも尖った歯は美しい成人女性の特徴として評価され、身体装飾の一つとして続けられてきた。
さらに意外なのが、20世紀の欧米の一部で行われていた婚前抜歯である。カナダ東部のアカディア系社会では、若い女性が結婚前に少なくとも上顎、場合によっては上下の歯をまとめて抜き、総義歯にすることがあった。2011年、伝統的なアカディア人居住地域の歯科医182人を調べた研究では、回答した90人のうち8人が実際に婚前の全抜歯を依頼された経験を持ち、さらに9人がこの慣習を知っていた。
義歯は単なる治療器具ではなく、一種の嫁入り道具だった。虫歯になった歯を何度も治療するより、若いうちに抜いて義歯にしておけば、結婚後に夫が妻の歯科治療費を払い続けなくて済むという考えがあった。歯並びの悪さや変色した天然歯より、均一に並んだ白い義歯の方が美しいと考える人もいたため、健康な歯が残っていても抜歯を求めることがあった。
その後の生活では、女性は若いうちから総義歯を使い続けることになる。食べ物を噛む感覚は天然歯とは異なり、歯槽骨が痩せれば義歯の調整や作り替えも必要になる。それでも当時は「歯の悪い妻」より「すでに義歯になっている妻」の方が、将来の出費が予測しやすく、外見も整っているという価値観が存在した。結婚市場と医療費と女性美が、一度に女性の口の中へ刻み込まれた例といえる。
重い真鍮の輪を一生身につけるカヤン女性
ミャンマー東部のカヤン女性の首輪も、女性美と身体改造が重なった例である。少女のころから首の周囲に真鍮製の長いコイルを巻き、成長に合わせて大きなものへ替えていく。成人すると重さが数キロに達することがあり、その状態で食事、仕事、睡眠など日常生活を送る女性もいる。2017年の調査では、対象地域のカヤン女性の10.6%が首輪を着用していた。
一般に「輪によって首そのものが長くなる」と説明されることがあるが、実際には鎖骨や胸郭上部が押し下げられることで、外から首が長く見える効果が大きい。長年着け続けるため、本人にとっては取り外し可能なアクセサリーというより身体の一部に近い。調査では、着用女性は首輪を重い、苦しいと感じる一方、自分たちの姿を美しく、好ましいものとして高く評価していた。
この習慣については、虎から首を守るため、他民族にさらわれないよう女性を醜くするため、男性が長い首を好んだからなど多くの説明が語られてきたが、研究では一つの起源に絞れていない。現在では、民族的な誇り、女性美、家族や地域の伝統、観光収入など複数の意味が重なっている。男性の性的好みだけで説明するより、「美しいカヤン女性とはどのような身体か」という文化的な理想を長い時間をかけて実際の身体につくる習慣と見る方が分かりやすい。
「女らしい身体」は社会によって作られてきた
こうして並べると、女性の身体に求められてきたものは驚くほど矛盾している。ルワンダやモザンビークでは小陰唇を長くすることが性生活を豊かにするとされ、スーダンでは反対に女性器を切って狭くすることが理想の妻の身体とされた。メンタワイでは尖った歯が美しく、近代のカナダでは天然歯を抜き、白い総義歯を入れた若い女性が結婚への準備を終えたと考えられることがあった。
これらの習慣を男性から女性への強制だけで説明することもできない。少女の身体を加工する技術を伝えたのは、母親、叔母、姉、年長女性、助産師であることが多かった。女性自身も、改造された身体を美しいと考えたり、自分の性的快感や夫婦関係に役立つと考えたりすることがある。個々の女性の意思と、社会から受ける圧力をきれいに切り分けることは難しい。
坂口安吾が盲妹について描いたのは、少女の身体を男性客に都合のよいものへ作り替える極端な例だった。しかし、中国語史料まで含めて見直すと、人工的に失明させられた盲妹は少なくとも当時の記録と後年の口述の双方に登場する。そして世界各地では、目だけでなく、女性器、皮膚、唇、歯、首にいたるまで、その社会が求める「美しい女」「結婚できる女」「夫を満足させる女」の姿に合わせ、実際の身体そのものが作り変えられてきたのである。
出典
坂口安吾 — 日本文化私観
『現代文学』第五巻第三号, 1942
https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/42625_21289.html胡樸安 編 — 中華全國風俗志「廣東之瞽姬」
廣益書局
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:NLC416-10jh004854-28676_中華全國風俗志_第2卷.pdf時事畫報 — 盲世界
『時事畫報』第6期, 1912
https://www.sohu.com/a/312043606_287948歐三妹・羅二妹・黃彩群ほか — 舊社會梧州「盲妹」的苦難
『廣西文史資料選輯』第11輯, 1981
https://www.sohu.com/a/565456931_121119018Chao Wang — Disability and Social Inclusion: The Blind Songstress in Early Twentieth-Century Guangzhou
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