世界には、「ゴーストバスター」と呼ばれる職業が存在する。ゴーストバスターの仕事は、超常現象の調査と解決を行うことだ。
ゴーストバスターというと、コメディー映画『ゴーストバスターズ』のイメージが強いため、日本人の多くはうさんくさく感じるだろう。しかし、実際のゴーストバスターは、科学的に「幽霊を退治する」ことで、恐怖にとらわれている依頼者を救う。
そんなゴーストバスターの活躍を紹介しよう。
新居に引っ越した人々を怯えさせる「新居効果」
オーストラリアの不動産サイト「realestate.com.au」(2018年9月28日付)によると、近年、シドニーのゴーストバスター集団「Access Paranormal」に助けを求めてくる人たちが増えている。
不気味な音が鳴った、誰もいないのに足音がした、空き部屋から泣き声が聞こえた……。
ゴーストバスターは、こうした超常現象を「新居効果」と呼ぶ。新居に引っ越した人に多く見られる現象だからだ。
Access Paranormalの超常現象調査官、ベス・ダーリントンさんは、世界中で超常現象が起こる家を調査してきた。
調査を依頼してくる人たちは、自分が狂っているわけではないことを証明したがるという。そして、実際の調査では、ほとんどのケースで異常がないことが判明する。
「新しい家に引っ越してきたばかりの人は、きしむ床板や古い銅パイプに慣れていません。さらに冬の季節は、多くの時間を室内で過ごすことになるため、よけいに怖くなってしまうんです」(ベス・ダーリントンさん談)
超常現象は老朽化した家や高所にある家で発生する静電気などが正体で、合理的な説明が可能だ。たとえば、「幽霊の声」はホワイトノイズ探知機で捉えられるし、「不気味な影」も居住者自身の映ったものに過ぎない。
ゴーストバスターでも解決できない超常現象
Access Paranormalが調査した超常現象に中には、解決できなかったものもあるという。
「かかってくる電話のほとんどは、シドニー西部にある住宅の調査依頼です。この地域では、奇妙な出来事がたくさん発生しています。不気味なエネルギーが渦巻く家もあります」と語るダーリントンさん。
何度も何度も調査を依頼される家があるそうだ。そんな家の一つがシドニー郊外のプラムトンにある。所有者のトレヴァー・ガーランドさんは、家に誰もいないときに何者かの足音を聞いた。訪問客の中には、「少女の幽霊を見た」と言う人までいる。この家が建っている土地には少女の遺体が埋まっているという噂がある。
また、カムデンのとある家も調査依頼が多いという。訪問客が時々子どもの幽霊を見るのだ。1909年、その家の近くで、14歳の少年を含む2人の子どもが溺死した。
超常現象を調査する団体「Greater Sydney Paranormal Investigations」を運営する超常現象調査官・電気技師、トッド・フォックスさんは、シドニー郊外のケリーバイルで心霊現象の頻発していると言う。フォックスさんが最近調査に赴いたのもケリーバイルの家だった。
1階に託児所がある2階建ての家は、以前の所有者が自殺したといういわくつきの物件だ。現在の所有者は、託児所の子供たちが、存在しないはずの人間と歌ったり会話したりしているのを目撃したと語る。フォックスさんは、この家の不可思議な出来事の原因を明らかにできなかった。
「私たちは9時間そこにいました。サーモグラフィ画像も撮影しました。そのとき私は、誰かが耳元でささやくのを感じました。でも、それが何だったのかわかりません。すべてがとても奇妙でした」(フォックスさん談)
サザランド・シャイアで超常現象調査を行うジャニーヌ・ドニーリアンさんは、「ほとんどのケースは居住者の妄想にすぎません。でも、本当に何者かが妨害してくることがあって、そのときは、外部に助けを依頼することがあります」と語る。その「助け」の中にはお祓いも含まれる。一方で、インチキも多く、大金をかけてお祓いしても効果がないこともあるそうだ。
シェルボーン・ホテルの一室で頻発する超常現象
アイルランドのニュースを紹介するメディア「IrishCentral」(2018年10月8日付)では、著往生現象が頻発するホテルと、その超常現象に関する見解を述べるゴーストバスターについて紹介された。
アイルランドの首都ダブリンの中心部にある「シェルボーン・ホテル」は、有名な高級ホテルだ。しかし、ホテルの一室では、不気味な音が鳴ったり物が移動したりするポルターガイスト現象が発生したり、女の子の幽霊が出たりするという。
アイルランド放送協会のドキュメンタリー番組は、ホテル管理人の証言を紹介した。それによると、問題の部屋に泊まった客が、恐怖のあまりパニックに陥って、叫び声を上げながら逃げ出してきたことが何度もあったそうだ。半年に2、3回は、洗面台や浴槽、シャワーなどが勝手に動く超常現象が起こっている。
ゴーストバスターが超常現象の調査に乗り出した
何人もの宿泊客が「幽霊が出る」と騒ぐため、ホテルのスタッフの一人がその真偽を確かめるため、問題の部屋で夜を過ごした。このとき起こったのは、蛇口が勝手に開いて水が流れ出すポルターガイスト現象で、さらに、正体不明の白いものが現れたという。
超常現象を引き起こしているのは、1791年にコレラで死亡した7歳の少女、メアリー・マスターズの霊だとされる。2015年、シェルボーン・ホテルに泊まったハリウッド女優、リリー・コリンズさんが、この少女の霊の存在を感じそうだ。
こうした経緯から、アイルランド国内トップの実績を誇る超常現象調査チーム「Irish Ghost Hunters」が調査に乗り出した。
Irish Ghost Huntersのトップ、ティム・ケリーさんはシェルボーン・ホテルの幽霊に興味を示す一方で、「私たちが調査を依頼された『呪われた家』の約9割は、合理的な説明によって問題が解決しています」と語る。
具体的には、水道管から床下に水が滴って何かを叩くような音を出したり、配線トラブルで電磁場が強まって居住者が妄想に取りつかれたりするという。また、屋根裏のカリカリという音の正体はネズミであることがほとんどだ。
ケリーさんは、サーモグラフィカメラや強力なオーディオ機器など、ハイテク機器を駆使して調査する。それでも超常現象を解明できない場合は、心霊専門家にお祓いしてもらうことを勧めるという。
どこの国のゴーストバスターも、調査によって超常現象の多くを合理的に解決してきた。一方で、調査によっても解決できない超常現象があることも認めている。世界にはまだまだ不思議がたくさんあるようだ。