ファースーツとは何か? ケモノ愛好者が動物キャラクターに変身する

ファースーツとは何か? ケモノ愛好者が動物キャラクターに変身する 文化
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「ファーリー(furry)」とは、動物キャラクターや擬人化された動物、動物の属性を有する人間などを愛好する文化とその愛好者を表す言葉である。日本にも同様のジャンルに「ケモノ」があり、ケモノの愛好者は「ケモナー」と呼ばれる。

ファーリーのうち、自分自身を動物キャラクターのイラストなどで表現し、そのキャラクターになり切ってネット上でさまざまな活動を行うのが「ファーソナ(fursona)」である。

一方、現実世界でキャラクターになり切る「ファースーター(fursuiter)」は、そのキャラクターを模したコスチュームである「ファースーツ」を着用して、イベントに参加したり、写真撮影に応じたりする。

ファーリーがファースーツを着る動機

最も一般的なファースーツは人間の頭からつま先までをすっぽりと覆う全身タイプで、頭、胴体、手足、尾が備わっている。胴体部分が無く、頭や足、尾だけを装着する部分タイプのファースーツもある。日本では、動物キャラクターを模したコスチュームは「着ぐるみ」と総称されるが、ファースーツは必ずしも着ぐるみと性能が同じであるとは限らない。着ぐるみは高価なファースーツの代用品であり、ファースーツよりも重く、暑く、動きが制限されることが多い。

ファースーターがファースーツを着る動機は、仕事、慈善活動、娯楽、なり切り、精神的動機、性的動機の6つに分類される。性的動機は多くのファースーターから距離を置かれ、彼らのコミュニティでもタブー視されがちだが、近年は寛容になりつつあるという。ファーリーのYouTuberであるノス・ハイエナ(Nos Hyena)氏は「性的にファーリーが好きでも問題ありません。それに夢中になって、誰にも害を及ぼさない限り、徹底的にそれを追い求めてください」と語る。

ファーリーについて研究するグループ「FurScience」は、ファースーツの所有者の大多数は、ファースーツを着ている間、自信を持って、他人をあまり気にせず、見知らぬ人と交流したり新しい人に出会ったりしやすくなることを見出した。ファースーツは自信と脱抑制(自分自身でいられる自由や社会的規範からの自由)のきっかけとなり得るという。

ファースーツと社会経済的地位の関係

ファーリーの中でファースーターの割合がどの程度なのかは知ることは不可能である。しかし、FurScienceは、米ペンシルベニア州ピッツバーグで開催されたファーリー・イベント「Anthrocon 2018」でファーリーを対象に調査を実施し、ファーリーの45.8%が部分タイプもしくは全身タイプのファースーツを所有していることを明らかにした。

この結果は、ファーリーの25%が部分タイプのファースーツを、15%未満が全身タイプのファースーツを所有していることを明らかにした2011年のオンライン調査とは大きく異なる。FurScienceは2つの結果を比較検討し、母集団の社会経済的地位が、ファースーツを所有していると報告するファーリーの数に影響を与える可能性があることを示唆した。

「コンベンション(ファーリーイベント)に足を運ぶ人々とオンラインの間でこのような差異が生じる理由の1つは、ファースーツを所有している人々がコンベンションに集まり、公の場でスーツを着て披露する機会を得ているという事実があるのかもしれない。他の考えられる説明としては、ファースーツは非常に高価であることが多く、スーツを買う余裕のあるファーリーがコンベンションに参加するための旅費を捻出できる可能性が高いという事実である」

ファースーツの注文には高額な費用がかかる場合が多い。オーダーメイドのファースーツは、頭部だけで170~500ドル(約18,000~53,000円)、足などの追加には60~120ドル(約6,300~13,000円)の費用がかかる。全身のスーツを注文すると1,500~3,000ドル(約約16万~32万円)を優に超える。既製のスーツも決して安くはない。

一方、自分でファースーツを作成するのにも費用がかかる可能性がある。材料だけでなく、その材料を縫製してスーツにする方法を習得するための専門知識や技術、スーツを作成するのにかかる多大な時間も必要だからだ。

ファースーツを所有するには、多くの場合、社会経済的地位に恵まれていることが条件となっていると考えられる。

ファースーターが参加できるイベント

ファースーツ制作会社「CityMutt」によると、ファースーターは視力と聴力が制限されるため、相手の顔やボディランゲージが見えず、声も聞こえず、相手を不快にさせているかどうかすらわからないことがあるという。その上で、万一ファースーターから不快なことをされた場合は、暴力をふるったり暴言を吐いたりするのではなく、その場からそっと離れるか、不快であることをはっきり伝えることが望ましいとする。

こうした事情があってトラブルに発展しやすいため、ファースーターが参加できるイベントでは主催者がルールを定めている。

米国で開催されるファーリーイベント「Megaplex」の規約には、ファースーツに触れたり爪を立てたりする際は必ずファースーターの許可を得ること、ファースーターに忍び寄ったり周りに群がったりしてはいけないこと、ファースーターの着替えや休憩のために用意されたラウンジでは写真撮影をしないこと、何らかのトラブルを抱えたファースーターを発見したら手助けすることなどが記載されている。

日本で開催されるケモノイベント「Kemocon」にも同様の注意事項がある。参加者がファースーターに撮影やふれあいを求める場合、事前にコンタクト(合図)を取らなければならない。また、交流中に他の参加者に危害が及ばないような配慮も必要である。一方、ファースーターは公序良俗に反するスーツや他人に不快感を与えるスーツなどの着用が禁じられ、その他のガイドラインも守らなければならない。

ファースーターにも、ファースーターと交流したい参加者にも、ルールを守って行動することが求められている。

日本では、Kemocon以外に、デザインフェスタやコミケ、デパートメントHなどのイベントもファースーターを受け入れる。ファースーツを着てみたい人、もしくはファースーターと交流したい人はこれらのイベントに参加してみてはいかがだろうか。その際はルールの遵守をお忘れなく。

参考:The Daily DotWikiFur

トップ画像:Flickr

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