キリスト教では、人間が動物と性行為をする獣姦が禁じられている。旧約聖書の『出エジプト記』22章18節「全て獣と寝る者は必ず死刑に処される」の記載をその根拠とする。
近年は、世界的に「動物の権利(アニマル・ライツ)」の意識が高まり、動物を人間からの搾取や虐待から守ろうという動きも盛んである。こうした風潮の中で、動物虐待と考えられがちな獣姦はいっそうタブー視されるようになった。
特に米国の多くの州では獣姦に対して厳しく取り締まられる。動物との性行為が発覚するとニュースで重大事件として報じられる。
車の中で犬と性行為をした男を逮捕
ノースカロライナ州シャーロットで2022年6月20日、犬との獣姦を目撃されて通報された男が逮捕された。アマリ・ローレンス容疑者(31)は同月12日、車の中で犬と性行為をした。このときの様子を写真に撮った人物が警察に通報して事件が発覚し、警察が逮捕状を取得した。
ローレンス容疑者に暴行された犬は保護され、後にこの犬の引き取りや寄付の申し出が多数あったという。
馬と性行為をした男に懲役10年
テキサス州サンアントニオの地方裁判所は2022年6月29日、馬に性的暴行を加えた男に懲役10年を宣告した。ジャン・マリー・ブゴマ(24)は、2020年6月、2021年1月、同年2月に少なくとも3回馬と性行為をしたとされる。ブゴマは強盗と獣姦の複数の罪で起訴されていた。
報告によると、最初の事件の監視カメラ映像には、ブゴマが上半身裸で厩舎を歩いている様子が映っていたという。このとき、馬の飼い主は2頭の馬が傷ついていることに気づいた。後に獣医は、馬が性的暴行を受けたと診断した。
2021年1月、ブゴマは同じ厩舎で1頭の馬と性行為をした。他の2頭の馬は、足を拘束されてけがを負った。当局は1頭の馬に残っていた精液のDNAを採取した。同年2月、ブゴマは馬の飼い主に捕らえられた。ブゴマのDNAと、前月に採取されたDNAが一致したため、ブゴマが逮捕された。
犬を性的に暴行して死亡させた高校生を起訴
テキサス州テンプルで2022年2月16日、テンプル警察署の警官がテンプル高校に派遣され、同校生徒が犬を性的に暴行したという別の生徒の通報について調査した。
警官から事情聴取を受けたグレゴリー・モーズリー・ロペス3世容疑者(18)は当初犬に対する獣姦を否定したが、後に「犬をナイフで切り付け、その後性的暴行を加えた」ことを認めた。ロペス容疑者は獣姦の様子を携帯電話で動画撮影し、それを別の生徒に見せたという。
ロペス容疑者は獣姦などの罪で起訴された。テキサス州で重罪とされる獣姦は、未成年者の前で行われた場合や動物を殺した場合に第二級重罪となる。第二級重罪の刑罰は最低2年の禁固刑である。
裁判所の文書によると、ロペス容疑者は獣姦動画を撮影した携帯電話を警官に渡し、犬が撮影日の翌日に死亡したと述べたという。携帯電話の証拠から、犬への性的暴行とその犬の死が、2021年12月にロペス容疑者の自宅で起こったことが明らかとなった。
ベル郡動物管理局と捜査官がロペス容疑者の自宅を捜索し、ロペス容疑者の供述に一致する犬の死骸を回収した。地元の獣医によって行われた剖検では、性的暴行が犬に重篤な身体的傷害をもたらし、犬を死亡させたと結論付けられた。
獣姦の法規制は人権侵害になり得る?
獣姦が禁じられる根拠は、宗教の教義や動物愛護の思想だけでなく、人間が動物を通じて病気に感染したり、興奮した動物に負傷させられたりするリスクから説明されることもある。
一方、かつてはタブー視されてきた同性愛やSMなどが世界的に受容されつつある現在、獣姦の法規制は性的マイノリティに対する人権侵害とも考えられる。
動物を食べたり実験に用いたりすることは許されて、性欲を満たす目的で利用することは許されないという線引きに、そもそも合理性があるのかどうかも疑わしい。
米国の多くの州では獣姦が法律で禁止され、州によっては重罪とされる。容疑者が逮捕されれば、その個人情報はニュースとして全世界に発信されてしまう。獣姦を法で規制していくことは、人種差別やLGBT差別などの解消が叫ばれる時代や社会に矛盾しないのだろうか。
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